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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和37年(ネ)151号 判決

宮崎市旭通三丁目二六番地

控訴人

旭商事株式会社

右代表者代表取締役

田中重藤

右訴訟代理人弁護士

江川庸二

宮崎市栄町

被控訴人

宮崎税務署長

太田熊彦

右法定代理人福岡法務局検事

広木重喜

同宮崎地方法務局法務事務官

淵脇宝一

同宮崎地方法務局法務事務官

前田末市

同熊本国税局大蔵事務官

田川修

右当事者間の法人税更正決定処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、申立

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控許人に対し、昭和三五年六月二三日控訴人が控訴人の昭和三三年一〇月一日より昭和三四年九月三〇日までの事業年度における課税所得金額を金八万二、〇〇〇円、法人税額金二万七、〇六〇円とした法人税更正決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は主文同旨の判決を求めた。

第二、当事者双方の事実上及び法律上の陳述並びに証拠関係は、次の点を附加するほか、原判決事業摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

一、被控訴指定代理人の陳述

1  被控訴人は本件土地を一坪当り金四、〇〇〇円と評価したが、右は被控訴人の調査結果にもとづく路線価価格に該当する。而して右路線価価格は一般取引価格よりも数割方低く定められてある。本件係争地附近並びに川原町三七番地附近、宮崎小学校南側通り及び東側通り附近の土地の路線価価格の推移状況は別紙のとおりである。

2  川原町三七番地の土地の価格は昭和三三年頃一坪当り金七、〇〇〇円ないし八、〇〇〇円であるから、右価格と比較しても本件土地の同年度における時価を一坪当り金四、〇〇〇円と判断した被控訴人の評価は適正である。もつとも川原町三七番地附近には昭和三三年六月頃から鉄筋の高級建築物が相次いで建築されはじめ、地価が急速に謄貴したが、昭和三三年六月頃までは、戦災の荒廃地で高級建築物はわずかに点在する程度であつた。また、川原町は昭和三三年頃から橘公園がフエニツクス、芝等の生育により公園としての様相を整えてきたこと及び当該公園横の道路の鋪装が完成したことによつて現在にいたるまでの間急速に地価が謄貴した。昭和三三年当時川原町三七番地と本件係争地附近とを比較すると、地価にさほどの差異はなかつた。

3  宮崎小学校東側通りは、昭和三三年当時は橘公園沿いの通りが未発達のため人通りも少く本件係争地とその価格にとくに差異がなかつたが、近年にいたり橘公園沿いの通り(2記載の川原町を含む)がホテル街として発達するにつれ、人通りも増加し、係争地との間に若干較差の生じたところである。

4  宮崎小学校南側通り(旭通筋)は、昭和三三年当時から商店街として、発達し近年にいたり別表記載のとおり係争地との間順次較差が生じたところである。

以上の土地の評価額の推移状況を対比してみても、係争地についての被控訴人の評価に不当の点はない。

二、控訴代理人の陳述

一、記載の被控訴人主張事実を否認する。

川原町三七番地附近の建物、橘公園は昭和三三年には現在の状態に近い、輪郭の概略がすでにでき上つていた。(橘公園沿いの道路は昭和三三年に舗装が完成した。)

川原町の橘公園一体はもと大淀河畔に面する市内一流の旅館、料亭が櫛庇した地帯で、現在のような状態となることは何人も早くから予測し得たところであつた。

従つて同町附近の地価が昭和三三年頃から急速に謄貴したというのはあたらない。当時すでに本件係争地は川原町三七番地の地面の数分の一で、一坪当り約金二、〇〇〇円である。

三、証拠関係

控訴代理人は当審で新たに甲第三二号証の一から一四まで、甲第三三号証の一から三まで、甲第三四号証を提出し、当審における証人駒山国男の証言及び検証(昭和三八年六月一一日及び昭和三九年七月七日各施行)の結果を援用し、乙第九号証から乙第一一号証まで(乙第一一号証は一から五まで)の成立を認めた。

被控訴指定代理人は当審で新たに乙第九、一〇号証、乙第一一号証の一から五までを提出し、甲第三二号証から甲第三四号証まで(甲第三二号証は一から一四まで、甲第三三号証は一から三まで)の成立を認めた。

理由

一、当裁判所も、また、被控訴人が本件土地、建物について昭和三三年一〇月一五日当時の価格を金九六万七、七五五円と評価したうえ、控訴会社の計算による控訴会社から同会社代表者の長女財津徳子への売買価格金五〇万円との差額金四六万七、七五五円を控訴会社の脱漏所得と認定し、右金額から昭和三三年九月以前の繰越欠損金三八万五、七五五円を控除した金八万二、〇〇〇円を昭和三三年一〇月一日より昭和三四年九月三〇日までの事業年度における課税標準とし、その法人税額を金二万七、〇六〇円とした本件更正決定に違法の廉はないと判断する。その理由の詳細は次の点を補足するほか、原判決理由説示と同一であるからここにこれを引用する。

1  原判決理由説示(二)の(3)記載の認定事実(原判決が本件物件譲渡時(昭和三三年一〇月)の価格を金九六万七、七五五円と判断するにつき認定した諸事実並びに成立に争いのない乙第九号証から乙第一一号証(乙第一一号証は一から五まで)、原審証人堀好文、小倉光の各証言及び当審における検証の結果(第一、二回)を総合すると、本件土地建物の昭和三三年一〇月当時の価格(合計)は少くとも九六万七、七五五円であつたものと認定することができ、甲第三二号証の一ないし一四によつて示される最後の競買価格は原判決理由中説示の判断と同様物件に対する時価より相当低廉である一般の事実に鑑み前記認定を覆す資料となし難く、その他当審における控訴人援用の証拠を以ても右認定を動かすことはできない。

2  原判決一一枚目表一〇行目に「乙第八号証」とあるのを「成立に争いのない乙第八号証」と訂正する。

二、以上の次第で、本件更正決定につき物件価格の評価が不当であることを理由として取消を求める控訴人の本訴請求は失当であるから棄却すべきものとする。これと同旨の原判決は相当で本件控訴は理由がない。

よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 原田一隆 裁判官 塩見秀則 裁判官 宮瀬洋一)

別紙 路線価価格比較表(一坪当りの金額)

〈省略〉

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